このページでは、我が家の愛犬ポメラニアン「みかん」(享年10歳、オス)がエバンス症候群(Evans syndrome)と診断され、14日間の壮絶な闘病生活の末に旅立つまでの全記録をまとめています。
「犬が急に元気をなくした」「歯茎の色がおかしい」「ふらつく」——そんな異変を感じたとき、その背後に命に関わる免疫疾患が隠れていることがあります。同じ経験をされた飼い主の方、あるいは今まさに愛犬の病気と向き合っている方に、少しでも参考になればと思い、この記録を残します。
エバンス症候群とはどんな病気?
エバンス症候群(Evans syndrome)とは、免疫介在性溶血性貧血(IMHA:Immune-Mediated Hemolytic Anemia)と免疫介在性血小板減少症(IMT:Immune-Mediated Thrombocytopenia)が同時に、または連続して発症する自己免疫疾患です。
体を守るはずの免疫システムが誤作動を起こし、自分の赤血球と血小板を異物と誤認して攻撃・破壊してしまいます。赤血球が破壊されれば重篤な貧血に、血小板が破壊されれば出血が止まらない状態に陥ります。この二つが同時に進行するため、体へのダメージは非常に大きく、治療も複雑になります。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の症状
免疫系が赤血球を攻撃・破壊することで起こる貧血です。赤血球が急速に失われるため、全身に酸素を運ぶ能力が著しく低下します。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 元気消失・虚脱 | 酸素不足により体を動かすエネルギーが出なくなる |
| 歯茎・粘膜が白〜黄色になる | 貧血(白)と黄疸(黄)のサイン。健康な犬はピンク色 |
| 呼吸が速い・息切れ | 酸素不足を補おうと呼吸数が増える |
| 尿が赤〜茶色になる | 壊れた赤血球が尿に混じる(血色素尿) |
| 食欲不振・嘔吐 | 全身状態の悪化、黄疸による食欲低下 |
免疫介在性血小板減少症(IMT)の症状
免疫系が血小板を攻撃・破壊することで起こります。血小板は出血を止める役割を持つため、血小板が極端に減少すると、ちょっとした刺激でも出血が止まらなくなります。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 皮膚の点状出血(ペテキア) | 皮膚に細かい赤い点が多数現れる |
| 歯茎・粘膜からの出血 | わずかな刺激で血が出やすくなる |
| 鼻血・血便・血尿 | 粘膜各所からの出血 |
| 内出血による腹部膨満 | 体内出血は外見からは判断しにくい |
エバンス症候群の特に怖いところ
IMHAだけでも生命を脅かすほど重篤ですが、IMTが重なることで「貧血がひどいので輸血が必要なのに、血小板が少なすぎて輸血時の出血リスクが高い」という、非常に治療の難しいジレンマが生じます。
エバンス症候群は犬・猫・人間いずれにも発症する可能性があります。犬ではコッカースパニエル、プードル、シェルティー、ダックスフンドなどで比較的多いとされていますが、ポメラニアンを含めすべての犬種で起こりえます。発症原因の多くは特発性(原因不明)で、ウイルス感染・薬剤・腫瘍などが引き金になるケースもあります。
愛犬みかんの紹介
みかんは2015年生まれのポメラニアン(オス)で、2025年に10歳で旅立ちました。名前の通りのオレンジ色の豊かな毛並みと、いつも尻尾を高く振り回している明るい性格が自慢でした。
シニア犬になってからも元気いっぱいで、毎日の散歩を楽しみにしており、食欲も旺盛。定期的に動物病院で健診を受けており、特に大きな病気もなく過ごしていました。そんなみかんが突然倒れるように具合が悪くなったのが、2025年5月19日のことでした。前日まで普通に過ごしていたにもかかわらず、翌朝には別の犬のように弱り果てていたことが、今でも信じられません。
最初の異変〜エバンス症候群の診断(闘病1〜2日目)
2025年5月19日(月)の朝、みかんがいつものようにご飯を食べず、横になったまま動こうとしませんでした。最初は「ちょっと疲れているのかな」と様子を見ていましたが、午後になっても改善せず、歯茎の色が普段よりずっと白いことに気づきました。
これはおかしいと感じ、すぐに動物病院へ。血液検査の結果、赤血球数・血小板数ともに著しく低下していることが判明しました。翌日には二次病院での詳しい検査を経て、「エバンス症候群(免疫介在性溶血性貧血と血小板減少症の同時発症)」という診断が下されました。
エバンス症候群という病名を聞いたのはその時が初めてで、インターネットで検索しても日本語の情報がほとんどなく、どれほど深刻な状況なのかを理解するまでにしばらく時間がかかりました。
治療の開始〜入院まで(闘病3〜9日目)
診断後すぐに、ステロイド(プレドニゾロン)による免疫抑制療法が開始されました。免疫系の過剰反応を抑えることで、赤血球と血小板への攻撃を食い止めるという治療です。
しかし数日が経っても血液検査の数値はなかなか改善しませんでした。みかんの体力は日に日に落ち、食欲はほぼゼロ。自力で立ち上がることも難しくなってきました。闘病9日目(2025年5月27日)、ついに「入院が必要」という判断がなされました。
エバンス症候群の主な治療法
| 治療法 | 目的・内容 |
|---|---|
| ステロイド療法(プレドニゾロン等) | 免疫抑制。赤血球・血小板への自己攻撃を抑える第一選択薬 |
| 免疫抑制剤(シクロスポリン等) | ステロイド単独で効果不十分な場合に追加 |
| 輸血(全血・濃縮赤血球) | 重度貧血に対して酸素運搬能力を一時的に補う |
| 免疫グロブリン製剤(IgG) | 血小板への攻撃を一時的に緩和。高価だが即効性あり |
| 点滴・支持療法 | 体液バランス維持、栄養補給、脱水防止 |
| 脾臓摘出 | 薬物治療が無効な重症例への外科的選択肢 |
入院・緊急輸血〜ドナー犬との奇跡の出会い(闘病10〜13日目)
入院後、精密検査が続きました。血液数値は危険な水準まで落ち込んでおり、一刻も早い輸血が必要との判断がなされましたが、病院の血液バンクには在庫がない状況でした。
そこでやむなく、SNSとブログを通じてドナー犬(献血してくれる犬)の緊急募集を呼びかけることになりました。当時はとにかく必死で、「誰か助けてください」という一心でした。
拡散に協力してくれた方々のおかげで、数日以内にドナー犬が見つかりました。面識もない飼い主さんが「うちの子でよければ」と名乗り出てくださったのです。その言葉を聞いたとき、涙が止まりませんでした。人と犬のつながりの温かさを、そのとき初めて本当の意味で知った気がします。
輸血は無事に行われ、一時的にみかんの状態は持ち直しました。数値がわずかに改善したと聞かされたとき、「まだ諦めなくていいんだ」と心から思いました。
犬の輸血について知っておきたいこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 犬の血液型 | DEA(犬赤血球抗原)で分類。DEA 1.1が輸血適合で最重要 |
| 輸血前の検査 | クロスマッチ試験で適合性を事前確認。ミスマッチは致命的 |
| ドナー犬の条件 | 体重25kg以上・健康状態良好・ワクチン接種済み等(病院により異なる) |
| IMHA輸血の注意点 | 輸血した赤血球も自己免疫で攻撃されるため効果は一時的 |
| 輸血のリスク | 輸血反応(アレルギー・発熱・血圧変動)、感染リスクなど |
最期の日々〜旅立ち(闘病14日目)
輸血後も病状は一進一退を繰り返しました。免疫システムの誤作動はなかなか治まらず、輸血した赤血球もまた攻撃されていきました。みかんの体はそれ以上闘い続ける力を持っていませんでした。
入院中は毎日面会に通い、名前を呼んで声をかけ続けました。点滴の管につながれながらも、面会に来るとわずかに目を細め、尻尾をかすかに動かしてくれていました。今思えば、それが最後の「ありがとう」だったのかもしれません。
2025年6月1日(日)、みかんは14日間の闘病の末、静かに息を引き取りました。享年10歳。先生から「最後は苦しまずに逝けた」と聞かされたことが、唯一の救いでした。
お別れ〜立会家族葬(2025年6月2日)
翌6月2日、家族だけでみかんを見送る立会家族葬を執り行いました。大好きだったおやつとお気に入りのおもちゃを一緒に棺に入れ、炎の中へ送り出しました。
「10年間ありがとう。うちに来てくれてありがとう。たくさんの笑顔をくれてありがとう」——それしか言葉が出てきませんでした。みかんが家族でいてくれた10年間は、私たちにとって何にも替えられない宝物です。
飼い主として気づいたこと・伝えたいこと
みかんを失って最も後悔したのは、「もっと早く異変に気づいてあげられたかもしれない」という思いです。エバンス症候群は発症すると急速に悪化しますが、早期発見・早期治療で回復するケースも報告されています。
今すぐチェック!エバンス症候群の早期発見サイン
以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、すぐに動物病院へ連れていってください。特に「歯茎が白い・黄色い」「急に元気がなくなった」は緊急サインです。
| チェック項目 | こんな様子があったら要注意 |
|---|---|
| 歯茎・口の中の粘膜の色 | 白い・黄色い・青みがかっている(健康な犬はピンク色) |
| 元気・活動量 | 急に元気がなくなった、横になったまま動かない |
| 食欲 | 突然ごはんを食べなくなった |
| 呼吸 | 安静時に呼吸が速い、口を開けて呼吸している |
| 尿の色 | 赤〜オレンジ〜茶色に変色した尿が出た |
| 皮膚・白目 | 黄疸(黄色みがかっている)が出ている |
| 出血傾向 | 歯茎や皮膚に点状出血(赤い点)、血便・鼻血 |
シニア犬こそ定期的な血液検査を
みかんが発症したのは10歳のシニア期でした。シニア犬は免疫機能が変化しやすく、自己免疫疾患を含む様々な病気のリスクが高まります。年1〜2回の定期健診と血液検査は、異変を早期に発見するための大切な習慣です。
「元気そうだから大丈夫」と思っていても、血液検査の数値は外見だけでは判断できません。みかんも、発症前日まで普通に散歩を楽しんでいました。だからこそ、定期検査の重要性を、今は身に染みて感じています。
また、ペット保険に加入していれば、急な入院や輸血にかかる高額な治療費の負担を軽減できます。シニアになってから加入しようとすると保険料が上がったり加入できない場合もあるため、元気なうちに検討しておくことをおすすめします。
同じ病気と闘う犬と飼い主の方へ
エバンス症候群と診断されたとき、私はインターネットで必死に情報を探しました。でも日本語の体験談はほとんどなく、不安ばかりが膨らんでいきました。だから、この記録が同じ状況にいる飼い主の方の力に少しでもなればと願っています。
エバンス症候群は稀な病気ではありません。そして、適切な治療で回復する子もいます。治療には時間とお金と忍耐が必要ですが、諦めずに主治医の先生と一緒に最善を探し続けてください。
どんな結果になっても、あなたが愛犬のそばにいて全力を尽くしたことは、必ずその子に届いています。みかんも、最後まで一緒にいてくれてありがとうと言いたかったと、私は信じています。
闘病記録:全記事一覧
みかんの闘病記録は以下の記事に日ごとに記録しています。詳しい経過・症状・治療内容はこちらをご覧ください。
- 闘病1日目:突然の体調不良と緊急受診
- 闘病2日目:エバンス症候群の診断
- 闘病9日目:ついに入院へ
- 闘病10日目(入院1日目)
- 闘病11日目(入院2日目)
- 緊急のお願い:ドナー犬を探しています
- ドナー犬が見つかりました!
- 闘病12日目(入院3日目):ドナー犬募集の夜
- 闘病13日目(入院4日目):奇跡のドナー輸血
- 【ご報告】本日、愛犬ポメラニアンの葬儀を執り行いました
エバンス症候群の治療費・入院費の目安
エバンス症候群の治療は、通院・入院・輸血・薬剤費などが重なり、数十万円以上になるケースも珍しくありません。みかんの場合も、診断から旅立ちまでの14日間で相当な費用がかかりました。
| 費用項目 | 目安金額(参考) |
|---|---|
| 血液検査・診断 | 1万〜3万円(初診時) |
| ステロイド・免疫抑制剤 | 数千円〜2万円/月(用量による) |
| 輸血(全血1回) | 3万〜8万円程度 |
| 入院費(1日) | 1万〜3万円程度(処置内容による) |
| 点滴・注射・処置 | 1回数千円〜数万円 |
※金額は病院・地域・処置内容により大きく異なります。あくまで参考値としてご覧ください。
ペット保険に加入していれば、こうした高額な治療費の一部をカバーできます。エバンス症候群のような免疫疾患は「慢性疾患」として継続治療が必要になることも多く、保険の有無で家計への負担が大きく変わります。元気なうちに比較・検討しておくことを強くおすすめします。
▼ あわせて読みたい
🐾 【体験談ブログ】ポメラニアンの手術体験記|気管虚脱と向き合った日々


コメント